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公益社団法人 東京都不動産鑑定士協会/Tokyo Assiciation of Real Estate Appraisers.


1.不動産市場

回復の兆しを見せつつあった我が国の景気動向だが、3月の東日本大震災の影響により、一度停滞することとなった。震災直後に比べ、改善の傾向は見受けられるものの、個人消費、設備投資、住宅建設、公共投資はいずれも弱い動きとなっている。電力供給の制約や原子力災害及び原油高の影響に加え、海外経済の回復がさらに緩やかになること等により、景気が下振れするリスクが存在する。また、デフレの影響や雇用情勢の悪化懸念が依然として残っていることにも注意が必要である。

不動産取引件数は、震災直後は停滞していたものの、直近では震災前の水準に戻りつつある。震災の影響により、需要者のマインドは変化しつつあり、耐震性・地盤の安定性の重視、高層階より低層階を好む、等の傾向が見られるようになった。オフィス市場では、立地・グレードの優れるビルについては賃料の下げ止まり、空室の改善の動きが見受けられる一方で、築年の古い耐震性に懸念があるビルについては動きが弱く、二極化の傾向が強くなっている。

2.地価動向

1.住宅地

東京23区住宅地の平均変動率は▲1.3%(前年▲3.1%)となっており、依然として下落傾向が続いているものの、その下落幅は縮小している。

文京・台東区の2区については、▲2.0%台後半と比較的下落が大きいが、千代田・中央・品川・目黒・大田・中野・杉並・北・練馬・葛飾区の全10区は、▲1.0%以下の微減に留まった。上昇地点はないものの、横ばい地点が4地点となっており、回復への反転が期待される。

都心3区(千代田・中央・港区)の平均変動率は、千代田区▲0.8%(前年▲6.2%)、中央区▲0.9%(前年▲0.7%)、港区▲2.1%(前年▲4.9%)となっている。

千代田区の番町・麹町界隈は新規の販売物件が少ないために、需要が供給を上回る状況が続いている。中古マンション市場は堅調に推移しているが、賃貸市場はやや弱含みと思料される。

中央区は月島・勝どき地区に超高層マンションが2棟完成し、マンション市況回復の象徴的な地域であったが、東日本大震災の影響から需要マインドが変化し、買い控えの傾向が見受けられる。

港区の高輪・白金地区は、震災前に較べ、富裕層の様子見感から地価は横ばいとなっている。

2.商業地

東京23区商業地の平均変動率は▲2.6%(前年▲5.5%)となっており、下落傾向が続いているものの、住宅地同様、その下落幅は縮小している。

杉並・葛飾・足立区が▲1.0%以下の下落で留まっている一方で、千代田・中央・港・新宿・文京・台東・渋谷・豊島区の全8区は▲3.0%以上と、比較的強い下落が継続している。

都心3区(千代田・中央・港区)の平均変動率は、千代田区▲3.2%(前年▲8.7%)、中央区▲3.0%(前年▲10.8%)、港区▲4.5%(前年▲7.3%)となっている。

千代田区の丸の内地区は、日本を代表する高度業務集積地区であり、内外の一流企業がオフィスを構えている。需給動向は、本年は供給が最も少ない時期であるが、間もなく大型ビルが供給されるので、需給の逼迫感はない。賃料水準の調整が進み、空室率も若干減少している。

中央区の銀座地区は、百貨店を中心とした増床・戦略変更により商況に回復感があったが、震災後は外国人の買物客が極端に減少した。現在は外国の買物客も戻り始めている。松坂屋の再開発計画も有り、 商況回復に期待感が持てる。

港区の新橋地区は、ビルが老朽化して、需要が薄いことから家賃の値下げ圧力が強い。外堀通りはビルの建替えが多い。

渋谷区の表参道地区等は商況の好調を維持しているが、背後地域の落ち込みが大きい。渋谷地区のオフィスは、嘗てのITブームの終焉により依然として中小ビルへの需要が低迷している。 

新宿駅西口の超高層ビルは築年が古いことから、近年需要が低迷していたが、賃料の調整が進んだことと、震災の影響により地盤強固で耐震性の高いことが見直されている。新宿の商業地は売上高が1兆円を超える日本最大の商業集積地区であり繁華性も高い。コマ劇場の再開発計画の発表も有り、今後に期待が持てる。

唯一の上昇地点となったのは、足立5-5(足立区千住旭町)の+3.3%である。東京電機大学の新キャンパスの進出と駅周辺の整備の進捗及び既存大型店舗の商況好調の持続を要因としている。

公的評価と不動産鑑定士の役割

不動産鑑定士は民有の不動産を評価するだけではなく、公的評価も行っており、いずれも重要な業務である。公的評価とは一般に地価調査・地価公示・相続税路線価・固定資産税の評価等を指す。

土地基本法第16条には「国は、適正な地価の形成及び課税の適正化に資するため、土地の正常な価格を公示するとともに、公的土地評価について相互の均衡と適正化が図られるように努めるものとする」とある。不動産鑑定士はこの国の努力目標が達成できるよう、鑑定評価活動を通じて貢献していかなければならない。

また、公的評価は都民の皆様の納税に直接関係してくること、適正な価格指標を提供させていただくことから、専門職業家として皆様の期待に応えられるよう、常に公平妥当な態度をもって職務を遂行せねばならない。

そこで、この職務遂行に不可欠なのは「取引価格情報の収集・提供スキーム」である。このスキームは不動産の取引価格情報を国民に提供することにより、公的評価の精度向上・説明責任を果たすことを目的としている。

具体的には、最初に国土交通省が法務省から土地登記簿の異動情報を受け、不動産の購入者に対して取引価格等に関するアンケート調査を行う。この調査結果を受けた不動産鑑定士が取引事例データを整備し、国土交通省へ納品する。最終的に、このデータは各々の物件に関する個人情報が特定できないように加工し、インターネットを通じて国民の皆様に広く、無償で提供している。

なお、これらの具体的な取引情報は公的評価で活用されるものの、税務署等の税務関連機関への提供はなされない。情報提供者の方の善意によって成り立っている制度である以上、情報提供者に不利益が生じないように配慮されている。

我々不動産鑑定士はこの制度が都民の皆様をはじめ、国民の皆様により一層活用していただけるよう、積極的に参加し、公的評価のより一層の精緻化を図るよう努めていきたい。

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